事例紹介<在宅ワーク発注企業>
株式会社ダンク
さまざまな校正業務を続ける中で、クライアントから制作まで任される依頼が増え、請け負うようになっていきました。現在、パートナー企業が制作工程を担い、同社では進行管理と内容の品質管理を担当しています。また企業のウェブサイトに掲載される記事のチェックも請け負っています。SEO対策において記事の正確性や専門家の監修が重視される昨今の流れのなか、同社では情報の正確性や妥当性なども含めて品質を保証しています。さらに、記事の評価には適切な監修者の存在も重要なため、有資格者や専門知識を持つ人材を探し、監修を依頼するサービスも手がけています。

在宅ワーカーの活用を始めたのは、今から約5年前のことです。クライアントからの依頼の幅が広がっていく中、せっかくご依頼いただいたものには可能な限り応えたいという思いがありました。しかし、社内・出向先スタッフを合わせると100名以上の体制でしたが、専門性の高い依頼内容が増え、自社スタッフだけでは対応が難しいケースが生じてきました。そこで「フリーで活動している専門スキルを持つ人材にお願いできないか」という考えから、徐々に在宅ワーカーの活用を増やして行きました。その結果、企業としてのキャパシティを広げることにつながっています。
特に転機となったのが、埼玉県主催の「ビジネスマッチング交流会」への参加でした。「参加してみて、こんなにも多様なスキルを持つ人材がいるのかと驚きました。英語が得意な方、特定分野に資格を持っている方など、自社だけではカバーしきれない領域に対応できる人材と出会えたことが大きかったです。」と増本氏は振り返ります。
現在は専門性の高い翻訳や校正の依頼が比較的多い状況です。在宅ワーカーには日本語から英語への翻訳、さらにその文章が自然かどうか、表現が適切かを確認する工程を担ってもらっています。また、日本語版のパンフレットを英語版に翻訳し、その後の整合性チェックを行う案件も増えています。加えて、特殊分野の記事監修の手配が必要となるケースも多くなっています。
特にこの数年で英語関連の依頼が増えており、「自社で常時配置できるわけではない専門スキルを、必要なタイミングにピンポイントで依頼できるのはとても助かっています。」と語ります。
在宅ワーカーの採用は、自治体のマッチングイベントで直接お話しするのが中心です。また、記事監修の場合は分野ごとに必要な資格や専門知識が異なるため、こちらはインターネットで探し、直接コンタクトを取るケースもあります。
増本氏は、「人材確保には課題もある。」と話します。これまでに依頼した在宅ワーカーは延べ100名ほどですが、案件の種類によっては継続的な依頼ができず、次の案件が発生した時には在宅ワーカー側のスケジュールが合わないこともあります。
また、スキルの見極めについても慎重さが必要です。履歴書や職務経歴書だけでは実際のスキルの判断が難しいため、まずは小規模な案件をお願いして作業の丁寧さやレスポンスの速さ、指示に対する理解度、コミュニケーションの相性などを総合的に確認するようにしています。
近年では在宅ワークに限らず環境やツールが大きく変化しており、今後さらに進化のスピードが加速していくと考えられています。特に生成AIに関しては活用できるのが前提となりつつありますが、一方でまだ手探りの部分も多く、セキュリティ面や情報管理のリスクについて十分な注意が必要です。「生成AIを使いこなすか」という視点と同時に、「適切に使うためのリテラシーを備えているか」が重要だと考えています。情報の取り扱いや使用者の倫理観を踏まえた上で、在宅ワーカーが生成AIツールを活用することが求められているのです。

物理的な距離があるからこその工夫も必要になります。増本氏は「この程度の内容の質問は申し訳なくて聞けない」という遠慮がある在宅ワーカーも多いのではないかと話します。そのため、同社ではできるだけ具体的に指示を出し、細かい確認を行うことを心がけています。Slack等のチャットツールを活用し、綿密なコミュニケーションを大切にしています。出社して隣の席にいるなら困っている様子や進行状況も伝わりますが、離れて仕事をしていると見えにくくなります。そのため「順調ですか?大丈夫ですか?」と適宜声をかけ、相談しやすい雰囲気を作るようにしています。こまめに確認しながら進めることで、方向性がずれた場合も早めに軌道修正できるよう意識しています。姿が見えないからこそ丁寧な配慮やフォローが重要であり、そうすることで在宅ワーカーに安心して働いてもらえるのではないかと考えています。
フルタイム勤務は難しくても、高いスキルや専門的な知識を持ち、働く意欲のある人材は多くいます。子育てや介護などの事情があり毎日通勤する事は難しくても、1日数時間であれば一定の仕事ができる人は少なくありません。
専門性を活かして活躍できる場は必ずあります。在宅ワークならではのコミュニケーションの難しさはありますが、工夫次第で企業側から見て重要な戦力になります。ビジネスマッチング交流会などに参加して必要な人材を見つけ、うまく依頼できれば企業として対応できる仕事の領域を大きく広げることができます。案件の多様化に伴い、必要なスキルを必要なときに確保する体制が求められる時代になりました。在宅ワーカーの活用は企業と働き手の双方にとって新たな選択肢となっていると感じています。
インタビュアー:丹羽貴子